パネル1 「「戦後補償裁判」が未来に果たす役割とは何か」の概要です

パネル1「「戦後補償裁判」が未来に果たす役割とは何か


構成 ①中国人強制連行事件の被害者と加害者の直接の対面場面(VTR上映)
   ②平頂山事件の裁判を通じての日中間の心の交流の軌跡の報告
   ③パネルディスカッション「日中間の歴史的和解の可能性」
    パネリスト:小山一郎・聶莉莉・井上久士・南典男


概要
 日本は戦後60数年の間、国家による戦争責任を果たしてきませんでした。そればかりか、政府高官の発言、教科書問題、靖国問題等の日本政府のそして日本人の姿勢が問題となっています。戦争被害者個人は民間賠償要求の声をあげ、国際世論までがこれらの日本の戦争中の行為を断じて許すべきではないとして声をあげ始めました。

 このような社会情勢を経て、1990年代半ばから中国人戦争被害者の日本国内における裁判が起こされるに至りました。もっとも2007年までの間、これらの訴訟の多くは敗訴し、最高裁による判断も出されています。しかし重要なことは、いずれの判決についても加害行為及びその被害につき事実認定を行い、あるいは日本国の違法性を認め、あるいは加害企業及び国の不法行為を認めてきたことです。そのうえで、日本政府による真摯な謝罪を求める判決、日本政府による解決を求めるいくつかの判決も出され、そして「西松強制連行事件最高裁判決」のように当事者間の解決を促す判決が出されました。

 そのうえで10年以上の裁判の闘いを通じ、被害者と加害者、被害者やそれを支える中国国民と日本国民との間に対話が生まれ、信頼関係が醸成され、問題解決に向けての共同の闘いが作られていきました。

 本パネルでは、このように判決及び裁判を通じて作られてきた日中間の交流が今後の日中間の「歴史的和解」に果たす役割、及びその可能性を探りたいと思います。



小山一郎(こやま いちろう)
山東省済南の陸軍第59師団の兵士として従軍し、三光作戦や強制連行作戦に携わり、その後シベリヤ抑留、中国撫順戦犯管理所を経て1956年に帰国。

聶莉莉(ニエ リリ)
東京女子大学現代文化学部教授。

井上久士(いのうえ ひさし)
駿河台大学法学部教授。専門は中国現代政治史、日中関係史。

南典男 (みなみ のりお)
弁護士。1995年より中国人戦争被害者の弁護団として、主に731・南京・無差別爆撃事件、遺棄毒ガス被害事件等を担当し、現在、中国人戦争被害賠償請求事件弁護団(全国)の幹事長。