パネル2「南京事件  発生の背景と沈黙の構造」の概要です

パネル2 南京事件 発生の背景と沈黙の構造

概要

[残虐行為の背景][加害体験の記憶と戦後の戦争認識]を柱に、南京事件の「加害行為」について、戦後日本の問題も含めつつ考えたいと思います。

[残虐行為の背景]
 上海戦〜南京攻略戦では、日本軍将兵(とくに兵士)は過酷な状況におかれており、(戦場という状況を勘案してもなお不必要に)人権を抑圧されていました。 このような軍事的合理性のない「日本軍による日本軍兵士への虐待」の実態を、その背景(補給の破綻、野営設備の不在、機械化の遅れなど)を含めて明らかにしたいと思います。
 また、現地の日本軍上層部が残虐行為をある程度放任した事実も、当時の史料から伺うことができます。 
 ここでは残虐行為の背景を多層的に、かつわかりやすくご解説いただく予定です。

[戦後の戦争認識と加害体験]
 いっぽう近年の研究は、加害行為のトラウマが原因で戦争神経症を発症したと考えられるケースが日本軍将兵の中にも少なからずあったことを示唆しています。しかし戦中戦後を通じて、それら将兵が抱える罪責感に日本社会は注意を払ってきませんでした。加えて加害体験の「カムアウト(公表)」を封じ込める力が働いてきました。
罪責感を参戦将兵個人にのみ負わせ、日本社会全体で共有せず、そのことが参戦将兵をいっそう苦しめてきた戦後史の問題も、ここで考えたいと思います。




吉田 裕(よしだ ゆたか)
一橋大学教授(日本近現代史)。

能川 元一(のがわ もとかず)
大学非常勤講師(哲学・倫理学)。2006年より南京事件調査研究会に参加。